1.加算税や延滞税について
相続税の申告期限は「相続発生の日から10か月以内」となっています。もし、この申告期限までに申告・納付が間に合わなかった場合でも、申告する必要があれば必ず申告しなければなりません。
このように申告期限を超えて申告することを「期限後申告」と言い、加算税や延滞税などのペナルティの対象となります。
無申告の場合には「無申告加算税」というペナルティがかかります。本来の納税額に対して15~20%の税率の加算税が課されるのです。
また、期限後申告には「延滞税」というペナルティもかかります。
申告期限の翌日から実際に納付した日までの期間に応じた利息のような税金です。延滞税の割合は数%ほどですが、銀行金利よりもかなり高い利率です。
税務調査など税務署からの指摘で期限後申告を行った場合には、高率の無申告加算税が課せられますが、自主的に期限後申告を行った場合には5%の加算税で済みます。
もし期限までに間に合わなかったとしても、できるだけ早く対応したほうが余計な税金を払わなくて済むのです。
2.申告額した財産が少なかった場合には・・・
申告期限内に申告が完了した場合でも、申告した財産に漏れがあったり税額を少なく申告してしまった場合には修正申告が必要となります。自分で間違いや漏れに気づき、自主的に修正申告を行った場合には加算税が軽減されます。
税務調査や税務署からの指摘で間違いが発覚した場合には「過少申告加算税」という思いペナルティがかかります。過少申告加算税は、追加で納付すべき相続税額の10~15%の税率で課されます。
3.故意に申告しなかった場合には・・・
相続税について申告しなければならないと知りながら故意に申告書の提出をしなかったり、申告しなけらばならない財産を隠していた場合など、悪質な方法で税金を免れようとした場合には「重加算税」という最も重いペナルティが課せられます。
重加算税の割合は本来納付すべき納税額に対して35~40%の税率で課せられます。また、刑事罰も課されることもあり犯罪として処分されることもありますので絶対にやめましょう。
4.延納と物納
相続税申告により多額の納税が必要になった場合、相続財産のなかに預貯金などが多ければ税金を納めることができますが、不動産の占める割合が多い場合、納税資金に困ってしまうケースが良くあります。
相続というものは突然起こってしまうもの。万全な準備ができているケースはそう多くはありません。急に発生してしまった相続税について、一度に全額を払えない場合には「延納」と「物納」という2つの特例が認められています。
①延納制度について
相続税は、現金で全額を一括納付するのが原則です。
ただ相続財産に占める不動産の割合が多い場合などの一定の条件が整えば、所定の手続きを踏むことにより分割で相続税を納付すること(延納と言います)が認められています。
ただ、延納する場合には数%の利子税を払う必要があります。
延納の期間は5年から最長20年まで認められるケースがあります。
また、次の要件をすべて満たす場合に延納を申請することができます。
- 相続税の納税額が10万円を超えている場合
- 金銭で納付をすることが困難な場合
- 延納額に相当する担保を提供すること
※ 納付税額が100万円以下かつ延納期間が3年以下の場合は不要
延納申請書を相続税の納税期限までに税務署に提出した場合
延納を受けることができる期間や利子税の割合は、相続財産の状況によって変わってきます。また担保に提供する財産も良く選定しないと思うように売却できなくなってしまうこともあります。また、分割納付はメリットがあるように感じますが、利子税の割合は銀行金利よりも割高であることが多いので、良く検討してから申請を行うようにしましょう。
② 物納制度について
延納制度を利用しても相続税の納付が困難な場合には、所定の手続きを踏むことにより、金銭以外の不動産や有価証券などで納付をすること(物納と言います)が認められています。ただ、何でもかんでも物納できるというわけではありません。
物納の対象となる財産は下記のように定められています。
次の順番に従って物納の対象となっていきます。
第1順位 国債や地方債など換金性の高い債券、売却可能な不動産など
第2順位 社債や株式などの有価証券
第3順位 車などの動産
調整区域内の土地や抵当権が付いている土地など、売却が難しい財産(物納不適格財産)については物納を行うことができません。
また、第1順位の財産を所有したまま、第2順位の財産を物納することは原則的に認められていません。
物納を行う場合には、相続開始から10ヶ月以内(相続税の申告納付期限)に税務署に物納申請書を提出し許可を受けなければなりません。
また、物納の手続をした後でも、一定期間内であれば、物納申請を撤回して金銭による納付により相続税を納めることも出来ます。
このように相続の手続きは複雑なケースもありますので、もし不安な方は相続の専門家である税理士にご相談を!